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「はやぶさ」探査機の状況について

すでにお知らせしていますように、「はやぶさ」は、セーフホールド状態を解除する一連の姿勢・軌道制御指令が一部不調に終わったと推定され、姿勢や通信系など探査機の主要なシステムの機能低下に陥りました。その後、11月29日には、低利得アンテナによるビーコン回線が復旧していたところです。

11月30日からは、自律診断機能による電波の変調のオンオフによる復旧運用を開始しました。続いて12月1日には、低利得アンテナ経由で、回線状況が悪く中断が頻発する状態ではありましたが、毎秒8ビットの伝送速度で、テレメータデータの取得が行えるようになりました。現在までに送信されてきた内容によれば、11月27日に指令した姿勢軌道制御は、何らかの原因により不調に終わり、大きな姿勢喪失または何らかの原因による電力喪失が発生したもようです。探査機内に漏洩した燃料の気化にともない、かなりの機器に大幅な温度低下が発生するとともに、発生電力の低下によりバッテリに深い放電が発生し、搭載機器、システム全般の電源系が広い範囲でリセットされた現象が生じたと推定されています。詳細は、なお解析中です。

12月2日には、化学エンジンの再起動を試み、小さな推力は確認できましたが、本格的な始動にはいたりませんでした。この結果、11月27日に発生した異常の原因については、なお解析中ではありますが、化学エンジンの不調が可能性のある原因の1つと考えられています。

12月3日には、探査機の高利得アンテナ軸(+Z軸)方向と太陽、地球をなす角度が、20ないし30度に拡大していることが確認されました。緊急の姿勢制御法として、イオンエンジン運転用のキセノンガスの噴射による姿勢制御法の採用を決め、ただちに運用ソフトウェアの作成を開始しました。12月4日には、このソフトウェアが完成し、実際にキセノンガスの噴射によるスピン速度の変更が試みられ、同機能の動作を確認しました。その後、ただちにこれを用いた姿勢変更を指令し実施しました。

その結果、12月5日には、太陽、地球と+Z軸のなす角は、10ないし20度まで回復し、テレメータ情報を最大毎秒256ビットの速度で、中利得アンテナ経由で受信および取得できる状態にまで復旧しました。

その後、試料採取のための弾丸発射の火工品制御装置の記録が取得でき、それによれば、正常にプロジェクタイル(弾丸)が発射されたことを示すデータが確認できず、11月26日にプロジェクタイルが発射されなかった可能性が高いことがわかりました。 ただし、システム全般の電源が広い範囲でリセットされたことによる影響も考えられ、11月26日の着陸前後に実施されたシーケンスの確認も含め、詳細を解析中です。

12月6日現在、「はやぶさ」探査機のイトカワからの距離は、視線方向に約550km、地球からの距離は約2億9千万kmで、イトカワから地球方向へは時速約5kmで相対的に飛行しています。

「はやぶさ」は、現在、イオンエンジン立ち上げのために、各機器を1つずつ再起動し、試験・確認を行っているところです。今後、Z軸リアクションホイールを使用する姿勢制御へ移行し、イオンエンジンの運転再開を行いたいと考えています。運転再開は、早くても来週後半の14日以降になる見通しです。帰還軌道計画については、現在もなお再設計中で、エンジンの運用効率の緩和などに検討が必要ですが、姿勢制御の回復(化学エンジンの復旧等)に目途をつけ、地球帰還に向けて努力致します。

11月29日以降、テレメータデータの確認が困難であったため、断片的な状況以外にお知らせすることができませんでした。イオンエンジンの運転再開ができ次第、あらためて状況をお知らせいたします。

2005年12月7日

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