第10章 たくましき仲間たち

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物語「性能計算書」(5)

まぼろしの「五代目」──ASTRO-E

「はくちょう」「てんま」「ぎんが」「あすか」に継ぐ五代目のX線天文衛星とあって、性能計算書は、気合を込めてさつまの芋焼酎「五代」とした。1955年のペンシル、1970年の「おおすみ」、1985年の地球脱出(さきがけ、すいせい)と、15年毎にワン・ステップ上の飛躍を遂げてきた日本の宇宙科学は、次の節目として2000年には、X線で跳躍台に乗ると考えていた。ところがこのASTRO-Eは軌道に届かなかった。数列どおりには行かないもの。

M-V-4/五代

虎穴に入らずんば ……──はやぶさ

「太陽系の化石」とも言われる小惑星は、私たちのルーツを探るための絶好の素材と言われる。そのためには高い技術が必要とされる。そのような技術を習得するためのミッションMUSES-Cは、まさに「虎穴に入って虎子を得る」挑戦となった。たまたま見ていた日本酒のリストに佐賀県嬉野温泉の清酒「虎の児」を発見したときには、ドキリとしたものである。天の配剤であった。その醸造元の社長さんからは、たくさんの「虎の児」を送っていただき、ISASニュースのエッセイ欄「いも焼酎」への玉稿も頂戴した。

M-V-5/虎之児/はやぶさ

虎之児ラベル

鹿屋と鹿児島のご好意──すざく

打上げのために内之浦に行ってからも、出てくる提案が「帯に短く襷に長し」だったが、取材の新聞記者さんから、おいしい芋焼酎「一(いっ)どん」の名を耳にした。プロマネは井上一(はじめ)である。躊躇なくこの焼酎を「はじめどん」と読むことにしてラベルを探しにかかった。鹿屋のある居酒屋にあると聞いて電話したら、店の前に出しておくからと言われ、わざわざ鹿屋まで足を運んでその店の前から2本のラベルつき空びんをピックアップして帰ったのも、懐かしい思い出である。加えて、内之浦の白坂友三の妹さんが、はるばる鹿児島から届けてくれた「一どん」(中身入り)には大いに恐縮した。

一どん

M-V-6/一(はじめ)どん/すざく

一どん(いっどん)ラベル

初陣──あかり

日本初の赤外線天文衛星ASTRO-Fでは、「どこかに《凱旋》という酒はないか。あればそれを赤い字で書いてセキガイセンにするんだが」と考えたが、結局は世界にそのような名前の酒は見つからなかった。切羽詰って性能計算書につけたタイトルは「初陣」、島根県津和野の清酒である。「初陣」という言葉の新鮮な語感が、平凡さから私たちを救った。

M-V-8/初陣/あかり

初陣ラベル

ほむら立つ日──ひので

打上げを控えた石垣島への出張の際に、「炎(ほむら)」という名の泡盛を見つけた。「ようこう」の後を継ぐSOLAR-B衛星の性能計算書にふさわしく、勢いのあるタイトルと思った。しかもこの衛星の打上げが、歴史あるミューロケットの最後の旅立ちになる。固体燃料ロケットとともに歩み続けてきた日本の宇宙科学が、ミューなき後も数々の働き手の「炎」のような情熱に支えられて力強い飛躍を遂げてほしい──そのような想いをこめたものである。

M-V-7/炎(ほむら)/ひので

炎ラベル

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