第10章 たくましき仲間たち

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物語「性能計算書」(4)

ようこうとX.O.

SOLAR-Aは太陽を捉える。“Sun”を「撮る」から「サントリー」、サントリーにはX.Oという銘柄があるのだが、じっと見ているうちにそれをエックス・レイ(零)と読めることに気づいた。性能計算書だけができあがっているのに、適当な酒が発見できないための、苦肉の命名であった。

M-3SII-6/X.O/ようこう

西武百貨店で──あすか

ASTRO-Dの打上げが迫り、内之浦への出張の朝になっても、性能計算書のタイトルが決まらない。的川が自宅を出てとりあえず向かった先は、羽田とは反対方向の池袋だった。西武百貨店。その酒販売のコーナーに立ち尽くすこと1時間。目を皿のようにして膨大な数の酒を凝視しつづけるうち、一本のバーボン・ウィスキーのラベルが目に飛び込んできた。“Four Roses”。ASTRO-Dを上から見ると4本のX線望遠鏡が並んでいる。“Four Roses”の4つのバラの絵柄は、それとそっくりではないか。内之浦に着いて衛星班の牧島一夫から「いやぁ、いい酒を見つけてくれましたねえ」と言われたのが、孤独な作業を完了した的川には嬉しかった。他愛ないものである。

M-3SII-7/Four Roses/あすか

性能計算書裏表紙

EXPRESS

ふくよかな雛田元紀が実験主任とあって、岩手の清酒「七福神」にもう一柱「お雛さま」を加えて、「八福神」と洒落てみた。結果は惜しいところで目標軌道に届かず。結果としては実験の一部は為されていたのであるが、それが判明したのは後々のこと。ドイツと組んだため日本の「福の神」の霊験はあらたかではなかったということか。

M-3SII-8/八福神

七福神ラベルと英文説明

スタート──はるか

新たな夢を宇宙へ運ぶM-Vロケットの1号機なのに、どうしてもいい酒が見つからなかった。結局フランスのコニャック“Otard”の先頭後尾の文字を変換して“Start”とした。大いに欲求不満になる命名ではあったが、実際の打上げは「絶妙のスタート」となった。

M-V-1/Start/はるか

Otardラベル

のぞみ

初の火星ミッションとしては、そのものずばりのワイン“Mars”(山梨)があった。あまりに平凡で面白さには欠けるが、まずはオーソドックスに日本の火星探査を始めようとの気持ちであった。余談だが、衛星名の「のぞみ」につき、所長の西田篤弘に「新幹線に断りを入れなくていいですかね」と問いかけたところ、「こっちの方が100倍も早いのだからいいだろ」と澄ました顔だった。

M-V-3/Mars/のぞみ

MARSラベル

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