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電波天文観測衛星「はるか」MUSES-B

「はるか」は、1997年2月12日、M-Vロケット1号機によって打ち上げられました。電波天文衛星として、大型展開アンテナ、VLBI干渉実験などさまざまな工学実験を重ねて、スペースVLBI観測を実現し、大きな国際共同によるVSOP計画の中心となった衛星です。
当初の予想を上回っての観測運用が続けられましたが、8年9ヶ月の長い年月の後、2005年11月30日に最期の運用が行われ、静かに引退しました。万一の破裂による爆発を防ぐため残った燃料を吐き出し、最期の電波停止コマンドキーは、この日のために出てこられた前プロジェクトマネージャー広澤春任先生によって押されました。日本標準時間11時28分08秒の時刻付きのコマンド送出確認のオペレーターの声は、死のときの医師の宣告のようにも聴こえました。
24時間態勢で懸命の運用を続ける「はやぶさ」チームの傍らで、集まってきた「はるか」チームは立ち並んで静かに最期の運用を見守りました。平成元年から始まった「はるか」プロジェクト、残務処理をして、今年度末に終了の予定です。17年は、さまざまな想い出を擁しています。とても簡単には語りきれません。
「はるか」はゆっくりと回転しながら、これからも静かにあの羽を広げて飛び続けます。
かつて日本の空には、朱鷺(とき)が美しく飛んでいたといいます。「はるか」が消えずに飛び続けてくれるのはうれしいことです。いつか、夕日に光る「はるか」を眺めてみたいと思います。

2005年12月  「はるか」プロジェクトマネージャー 平林 久

機体データ

名称(打上げ前) はるか(MUSES-B )
国際標識番号 1997-005A
開発の目的と役割

地上における電波望遠鏡と共同して軌道上で電波観測を行う(VSOP:VLBI Space Observatory Program)。また、大型アンテナの展開技術や衛星と地上局の原子時計の比較のための安定度の高いデータ送信技術、精密な姿勢制御など、各種の工学的実証も行う。※VLBI:Very Long Baseline Interferometer

打上げ 日時 1997年2月12日 13時50分
場所 鹿児島宇宙空間観測所(内之浦)
ロケット
構造 質量 約830kg
形状

1.5m×1.5m×1.0mの直方体
上部に最大径10m(有効径8m)の大型展開アンテナを備える

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軌道 高度 近地点560km 遠地点21000km
傾斜角 31度
種類 長楕円軌道
周期 約6時間20分
主要ミッション機器

ケーブルネットワークに金属メッシュ鏡面を組み合わせた有効径8mのアンテナ。主鏡、副鏡の2種類の反射鏡により、電波が長さ2.5mのフィードホーンの中に導かれる。

運用停止日 2005年11月30日
運用 打上げ後、3軸姿勢制御を確立した後、2月14、16、21日に軌道制御を行った。2月28日には、大型アンテナの主反射鏡の展開作業を終了、追跡局との双方向の通信リンクなどの技術的なテストを経て、スペースVLBI衛星として本格的な運用を開始した。
「はるか」が観測に用いる周波数は、1.60−1.73GHz、4.7−5.0GHz、22.0−22.3GHzであるが、打上げ直後に、22GHz帯が大変低い感度に落ちていることが判明した。これは打上げの時の振動が原因と思われる。したがって観測は1.6GHzと5.0GHzで集中的に行われた。
打上げ前は、搭載された太陽電池パネルへの放射線による損傷が衛星の寿命を強く制限すると考えられ、ミッション寿命は約3年と見られていたが、打上げから8年9ヶ月となる2005年11月まで運用は続いた。
観測成果

世界各国の電波望遠鏡群と協同観測することにより、口径3万km(地球直径の約3倍)もの仮想の電波望遠鏡の一部として天体の観測を行った。
これまでに、クェーサーPKS0637-752の電波とX線のジェットを1万分の2秒の解像度で観測、M87銀河のジェットを1000分の1秒角で観測することなどに成功した。

スペースVLBIを世界最初に実現し、観測をすすめた国際VSOPチームは、IAA(国際宇宙航行アカデミー: International Academy of Astronautics)の2005年Laurel賞を受賞した。